山水図

作品名:山水図

員数:1幅

技法1:日本画

技法2:紙本墨画淡彩

作者:長谷川信春(等伯)(1539~1610)

印章:「信春」朱文袋形印

制作年代:室町時代

法量(cm):縦52.8 横38.5

 

 本図は樹木の一部などに淡彩が施された、真体の水墨画である。雄大な山を背景に川が流れ、茅屋を訪ねるのか、橋を渡る高士と琴を携える童子が描かれている。あるいは「琴棋書画図」の場面を取り入れたものかもしれない。右下部に捺された「信春」袋形印や筆致から等伯信春時代の筆とされる。
 画面前方右端より、左画面中央に向ってジグザグに屈曲した樹木の表現は、信春時代の「寒江渡舟図」(個人)や「牧馬図屏風」(東京国立博物館)、等伯時代の「列仙図屏風」(京都市・壬生寺)などにも見られる特徴である。斜めに倒れかかった松の枝の形状や人物は、61歳筆「山水図襖」(京都市・隣華院)への繋がりを見せている。しかし、岩の表現にはまだ晩年の強い斧劈皴(斧で削ったような岩の表現)は見られず、山の表現などは51歳筆の「山水図襖」(京都市・圓徳院)に近い。
 本図の制作にあたり、手本とした具体的な作品は不明で、狩野派とも筆法や趣が異なるが、玉畹梵芳などによる賛がある、応永12(1405)年筆の「柴門新月図」(大阪市・藤田美術館)や、等伯を認めた春屋宗園(1529〜1611)に参禅し、大徳寺に孤篷庵を建てた小堀遠州(1579〜1647)の愛蔵品であったとされる、文清筆「山水図」(米国・ボストン美術館)などに共通性が見出せる。すなわちそこには、様々な室町水墨画や中国絵画を学習し、吸収しようとする若き等伯の姿があり、恐らく30歳代後半頃の制作であろう。