善女龍王図

作品名:善女龍王図

員数:1幅

技法1:日本画

技法2:絹本著色

作者:長谷川信春(等伯) (1539~1610)

印章:「信春」朱文袋形印

制作年代:室町末期

法量(cm):縦35.5 横16.3

指定:石川県指定有形文化財

 

 善女龍王は、空海が京都の神泉苑において請雨経法を修したところ応現したと伝えられる真言密教の護法神で、善如龍王とも表記され男神として修法される。一般的には、雲に乗る龍神の背に立つ中国の官服姿で描かれ、裾の後に蛇の尾が僅かにのぞくといった図様である。代表的な作品としては、高野山金剛峯寺蔵の定智筆、国宝「善如龍王図」がある。
 本図は当館が平成14年に購入する以前、少なくとも昭和20年代には「善女龍王図」として所蔵されていた。しかし図様はいわゆる密教絵画とは異なり、金剛峯寺本と比較すると明らかに同種の図像ではない。関連性が指摘されている清滝権現(一般的には十二単の女官姿とされる。畠山記念館本が著名)についても、やはり共通性はあまりみられない。
 そこで注目されるのが、『法華経』に登場する娑竭羅竜王の娘である。『法華経』の「提婆達多品第十二」では、8歳の龍女が成仏したという記述がある。また、その龍女が宝珠を仏に奉ったともある。本図の姿はまさに8歳ほどの童女のようであり、水中の岩盤上に立ち、左手には如意宝珠を載せ、後方には赤い宝珠を持った龍が描かれている。また、右手には龍女と関わりが深い利剣を持しており、やはり本図は、法華経信仰と結びついた龍女とするべきであろう。
 画面自体の状態は、口部に若干剥落があるものの比較的良好で、小品ながら信春時代の特徴である優美な色彩と精妙な筆致で描かれ、存在感のある作品である。その寸法からして、当時は厨子に祀られていた可能性がある。
 右下部には「信春」朱文袋形印が確認される。手や細部の筆致からして、26歳から27歳頃の制作と考えられる。